Kenya Kusunose
Tokushima Univertisy Hospital. MD / PhD
Manuscript -2017-
Project |01
Clinical Utility of Longitudinal Strain to Predict Functional Recovery in Patients With Tachyarrhythmia and Reduced LVEF. JACC Cardiovasc Imaging. 2017;10:121-129.
留学中の2013年にクリーブランドの犬の頻脈性心不全動物モデルのエコー指標を検討する機会がありました.その際にストレイン指標を用いて検討したのですが,頻脈性心不全状態では心尖部のストレインが落ちるという結果になりました.このことを臨床に応用できたらとずっと思っていたのですが,クリーブランドではデータベースが無く,他の仕事もあったため手がつかず.帰国後に一念発起してデータを集めた結果だったりします.
留学中にはストレインイメージングの申し子レベルになっていたのでその力を発揮できた論文と思っています.実は所属する徳島大学からは臨床のストレインイメージング(エコーの新指標)に関連するまともな論文が一つも出ていなかったので,これで徳島大学からもストレインの論文が書けることを示せたと思っています.
当初は思い切ってJACCに投稿したのですが,査読後にJACC imagingへの再投稿を勧められて,acceptを得た経過になります.自分の中ではclinical outcomeがあってnovelな研究はJACC try,clinical outcomeがあってもimpactが大きくない,もしくは横断研究はJACC imaging tryという考え方ですね.まあでもmulti-center study全盛のこの時代に頑張ってると思います(自画自賛).
Project |02
Echocardiographic Predictors for Worsening of Six-Minute Walk Distances in Patients With Systemic Sclerosis (Scleroderma). Am J Cardiol. 2017;120:315-321.
もともとは2015年のJACCにacceptされた6MW PH論文の全例のデータを使って,他に何か結果を出せないかと思ったのがきっかけでした.6分間歩行距離の悪化をアウトカムに設定したら,どのような指標で予測できるか検討してみたところ,当初の予想(右室機能やPHの重症度)に反して,左室拡張能が関連しちゃったという論文です.
JACC imagingやEuro imagingでrejectされた後,JASEに投稿したところ,2ヶ月ほどでDenovoで帰ってきたので,修正して提出しました.ここまでは良かったのですが,その後なんと11ヶ月待たされた挙句にrejectという恐ろしい展開を迎えたペーパーです.最終的に,強皮症に疾患を絞ることで,結果に説得力を持たせることが出来ました.校正は重ねてみるものです.
足掛けでいうと,1年半はかかったように思います.なかなかの難産論文でしたが,おかげで世に出ることが出来てほっとしています.PH関連ペーパーも二つ目になりました.
Project |03
RV Myocardial Strain During Pre-Load Augmentation Is Associated With Exercise Capacity in Patients With Chronic HF. JACC Cardiovasc Imaging. 2017 Jul 13. pii: S1936-878X(17)30495-3.
帰国後,データ収集を開始した研究についてまとめた初論文です.下肢陽圧負荷エコー指標により,運動耐容能が予測できないかを検討した研究で,細やかな計測項目が評価されたのか,少ないN数でもJACC imagingに受け入れられました.
当院では心臓リハビリグループがCPXを結構まめに行っているため,オーダーを毎週チェックして,その都度エコーを確認してデータ収集,足掛け2年程度で集まったデータを用いてまとめたものです.最初にJACC imagingに投稿したところ,思いのほかスムーズに査読が進んだ印象です.Franks-Starlingの法則を右室機能と絡めて論じたことも良かったようです.
実は下肢陽圧負荷の一般的な心不全にきちっとデータを取りながら検討したのは初だったりして,色々新たなことも明らかになりました.例えば,前負荷増大時のストレインの変動や,ストロークボリュームの変動,肺高血圧の出現など,いくつかの重要な変化を来たすことが明らかとなり,今後の研究の発展にも役立つと考えています.
Project |04
Age-related changes in morphology of left atrial appendage in patients with atrial fibrillation. Int J Cardiovasc Imaging. 2017 Aug 14. doi: 10.1007/s10554-017-1232-x.
2017年は難産系の論文が通る年の気がします.この論文も上記の強皮症PH論文と同じく,足掛け1年半以上かけて終着地を見つけることが出来ました.心房細動に罹患すると,加齢(罹患期間)により左心耳形態が変化していく可能性を提示した論文で,高齢者における左心耳形態のストロークリスクとしての意味に一石を投げかけることになりました.
当初はJACC imagingのletterに出そうということで800文字くらいでさらっと書いていたんですが,あっさりrejectされたため,full paperで頑張るという方針に切り替わりました.その後,reject重ねるうちに内容は磨かれていったのですが,根本的にnegative studyだったこともあり,受け入れてくれる雑誌がなかなか見つからず.Journal of Cardiology(心臓病学会の学会誌)にも蹴られたときには,さて,どうするかと本気で悩んだ記憶があります.
最終的にimaging journalに通ったので,結果オーラーでしょうか.教訓としては「negative studyは大変,だがいつかは通る」でしょうか.
1st authourの平田技師も,学位に引き続き2本目です.是非,3本,4本と年1がノルマくらいのペースで頑張って欲しいものです.
Project |05
Development and validation of optimal cut-off value in inter-arm systolic blood pressure difference for prediction of cardiovascular events. J Cardiol. 2017 Aug 19. pii: S0914-5087(17)30197-1.
初の博士号取得を目指す大学院生の指導をする中で,通った学位論文の研究です.上肢血圧の左右差が5mmHg以上ある場合,心血管イベントの発症リスクが高いという結論を,仮説立案コホートおよび検証コホートの両方で確認した論文です.Development cohortとvalidation cohortの両方を使った論文は実は初だったので,査読の過程で色々勉強も出来た研究でした.
AJC→Circ Jを経て,JCに通すことが出来ました.それまでにDevelopment cohortの数は多いほうが良い,Validation cohortの作り方,など色々と勉強することが出来たことも良かったですし,投稿中に日循の全国学会で,統計の講義を聞けたのもタイミングが良かったと思います.
1st authorの廣野先生はいままで英語論文を書いたことが無いということでしたが,レスポンス早く仕上げてくれたので,助かったのも良い思い出です.相手が実は年上なんですが,研究に関しては対等に話をしてしまったのは良かったのやら,どうだったのか(苦笑).